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第 I 章−8 「文化看護学会」への参加

看護職者が認識した沖縄における地域文化的看護体験

○知念久美子1)、野村幸子1)、盛島幸子2)、美底恭子2)、糸数仁美3)
1)沖縄県立看護大学大学院保健看護学研究科 博士後期課程
2)沖縄県立看護大学大学院保健看護学研究科 博士前期課程
3)名桜大学人間健康学部看護学部
  (沖縄県立看護大学大学院保健看護学研究科 科目履修生)

【目的】沖縄県で暮らしている患者・家族・住民との関わりの中で、看護職者が認識した地域文化的看護体験についてどのようなものがあるかを調べる。
【方法】沖縄県立看護大学大学院博士前期課程(島嶼保健看護)の科目として開講された「地域文化看護論」を受講した5名(筆頭発表者と共同発表者4名)が自らの看護体験および友人の看護職者から聞き取った体験を収集した。収集された看護体験について、内容を示すキーワードから類似するものをカテゴリーとした。
【倫理的配慮】看護体験を記述するにあたって、患者・家族・住民または体験した看護職者の個人が特定されないように配慮した。また、本研究は講義評価とは無関係なものとして計画実施された。
【結果】47の看護体験が集まり11のカテゴリーに分類された。災難が降りかからないように"御願"(ウガン=祈る)などの「慣習に従う事で心身のバランスを保つとその対応」が最も多く述べられた。「"ユタ"(シャーマン)を精神的拠り所にしている事とその対応」の多くは精神疾患の患者と家族に関する体験が述べられた。
 高齢者との関わりの中では"ブーブー"(瀉血)といった「民間療法とその対応」や「伝統料理に関する住民の認識とその対応」があった。また、島嶼地区の住民が死を目前にした時「島に戻りたいという思いとその対応」や火葬場のない離島では埋葬・洗骨・島外での火葬の選択の問題といった「死にまつわる風習とその受容」に関する体験、長男は島を離れる事が出来ないや1950年代には戸籍を汚したくないため子どもが3歳になるまでは入籍しないといった「家制度にまつわる風習とその対応」があった。
 限られた資源で生活する島嶼地区ならではの体験として、「"ユイマール"(共に助けあって生きる行動)に共感」する看護体験や緊急事態の際、役場職員が救急の対応に手慣れていることから救急対応を行う人材として「マンパワーを活用」する看護体験、台風時役場職員みんなで屋内にトイレを設置した「住まいに応じた台風対策の工夫と協働」といった看護体験もあった。また、「方言による仲間とのつながりとその活用」を意識し、その島ならではの呼び名を保健活動に活用した看護体験もあった。
【考察】集められた47の看護体験の文化的背景は、ユタ・御願に関わる祈りの文化や地域に発達した民間療法、沖縄の食習慣、死にまつわるもの、暮らしにおいてはその根底に流れている家制度からくる価値感もみられた。また、台風対策などの生活の知恵やともに助け合うという連帯感をもち、多様な能力を開発・発揮して協働するという島嶼性からくる地域文化的行動もみられた。
 看護職者は、患者や住民の地域文化的な様々な風習、行動パターン、生活様式に対して理解し共感し、また患者の精神的安定や健康への危険性を見極めて対応しそれを活用していた。

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